星と猫の数学

ローグライクとストラテジーとマイナー志向で黒猫なでなでしたい

金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿 (1)

90年代に推理漫画ブームを生み出した片割れである『金田一少年の事件簿』。そのスピンオフはいくつかありますが、このスピンオフ作品は犯人視点で数々の事件を振り返るというギャグ漫画です。本編はシリアスな金田一の事件ですが、それらの事件のトリックを仕掛ける犯人達の苦労が描かれており、その犯人自身があまりの無茶苦茶さやアクシデントにツッコミを入れているのが見所です。

(以下当作のネタバレに注意。また作品の都合上、金田一本編のネタバレも含まれます。)

記念すべき最初の事件『オペラ座館殺人事件』では自分の演技力を自画自賛したり*1、かと思えば自分で考えたのにあまりにもセッティングが困難すぎて見事成し遂げた際には『SASUKE*2出れるわ』と驚愕したり……いかに殺人事件をこなしていくのが困難かまざまざと見せつけられます。いや殺人なんてする機会があってはなりませんが。

次の『学園七不思議殺人事件』は全ての殺人に渡って計画性のない突発的なものだったにもかかわらず、窮地に追い込まれた際の閃きや嘘を多用したごまかしで切り抜けようともがく様が描かれました。この事件の最大のミスは『ポスターの選択』だという事がよく理解出来ます。見られなくないものをごまかす際には当たり障りのないものにしましょう。もちろん、そんな状況があってほしくはありません。

一方の三つ目の『蝋人形城殺人事件』では綿密な計画を練りあげた犯人が登場します。これまでの犯人は金田一をただの高校生と見くびっていたため油断してたのに対し、舞台として用意したミステリーツアーの参加者が探偵や推理作家など犯罪に関係する職業に就いているため、油断せずに計画を進行します。しかし(案の定)本人にとってキツいトリック実施や、ある殺人の際に起きたハプニングで危険な状態に陥ったり、スケープゴートにする計画があっさり見破られたため急遽別人に矛先を向けようとしたりするという慌て具合。その上犯人と見破られるきっかけとなった想定外の事態も起きたりと、いくつものほころびが出てしまいました。この犯人にとって最も脅威だったのは、これらの予想出来なかった事柄でしょう。計画には常に次善策を用意すべきという教訓ですね。殺人事件から学ぶ教訓なんてあるべきじゃないけど。

四つ目の『秘宝島殺人事件』はトリックよりも犯人がいかに自分が犯人ではないとごまかすかという手段に比重が置かれており*3、すっかり騙された金田一のアホさとそれで心中ガッツポーズする犯人が面白い。もっとも、『あるケアレスミス』が原因で金田一が犯人に気付いてしまうので結局それも破綻してしまうのですが。

しかしどの事件もそうですが、やはり探偵役である金田一があまりにも驚異的。ちょっとしたミスで犯人だと感づかれますし、必死に考えたトリックだって全部曝かれてしまいます。原作でも犯人視点の事件が何回か描かれましたが、普段は頭悪そう(というか勉強面は実際に頭が悪い)に見えるのに、こと推理となると頭が回りまくって恐ろしい。この世界の殺人犯にとっては、彼と出会わない事が一番なのかもしれません。もちろんそんな事件が描かれる事はあり得ませんが。

*1:これは他の犯人も同様だったりしますが、この事件では犯人が演劇部でも小道具係のため演技が出来ない方と自覚しているので尚更。

*2:様々な障害物を己の肉体で乗り越えていくというゲームで参加者の活躍を魅せるスポーツ系番組。

*3:この事件では複雑なトリックは使われておらず(使われたのはアリバイ確保のためのミスリード程度)、犯人のある『偽装』が鍵となっていたため。