星と猫の数学

私を退屈から救いに来た、夢のヒーロー

十行小説 「晴天の魔法少女」

 雨が降っていた。現在形ではない、過去形だ。さっきまで夏の豪雨があり、あと数時間はこのまま降り続けるだろうと思っていた。それなのに今は雨が降った事さえ夢か幻だったのではないかと思うほどに、混じりけのない青が空一面を覆っている。
 だが雨が降っていたのは事実だ。道路には大小無数の水たまりが作られ、今いる軒のへりからは雨だれが落ちてきている。
「お兄さん、元気になった?」
 少女の声に我に返った私は、改めて少女を見つめた。豪雨の中に飛び出したはずの少女はまったく濡れていない。
 私の理解を超えた何かが起こったらしい。それでも私の心は不思議と晴れやかだった。
「ああ、ありがとう」

お題

「軒下で雨宿り」

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