星と猫の数学

私を退屈から救いに来た、夢のヒーロー

【アニメピックアップ】 サカサマのパテマ

あらすじ

アイガに住む少年エイジは、ある日突然空へと落ちそうになっている少女パテマと出会った。彼女はアイガが『サカサマ人』と呼ぶ人間で、彼女や彼女の持ち物は重力の働き方がアイガの人々と逆方向であった。

一方、アイガの統治者であるイザムラがパテマの存在を知り、エイジから引きはがしてパテマを捕らえる。サカサマ人の存在はあってはならないのがアイガの安寧のため。

囚われたパテマを救うべく、エイジは出会ったもう一人のサカサマ人ポルタや他のサカサマ人の手を借りて管理タワーへと向かう。

その先にエイジとパテマが見た世界は――

概要

映画公開前に予告を見てずっと気になっていた作品でしたが、ようやく見ました。良い意味で想像通りの素晴らしいSF作品で満足しました。

この作品の特徴は何といっても重力が逆方向に働く人間と世界の存在です。エイジとパテマ、それぞれの人間や住んでいる世界は重力が真逆に働いており、特にアイガに出てきたパテマは空へと落ちそうになるという独特な恐怖を味わいます。エイジ側に感情移入する視聴者としては何も無い所へと落ちそうになる感覚というのはどれほどのものか想像しにくいです。

しかしそれだけでなく、互いに重力が逆という事は、二人が手を繋いだり抱き合ったりすればまるで月面のようにふわふわと浮かぶように歩く事が出来るというのが面白い。劇中ではそれを利用して大跳躍を行っていました。

(以下ネタバレ全開なのでご注意ください。特に未見の方でこれから見るつもりの方は絶対にこれを見る前に映画を見てください)

見所

物語の後半からラストにかけて、エイジとパテマは新たに二つの世界を目にします。

一つはアイガの『空』。ラストまで見て初めてその存在が何か理解できますが、実はこれは本物の空を模した人工的な太陽だったのです。夜は満天の星空のように点々と明かりを灯し、昼は発熱して太陽と同じ役割を担うという、超巨大な装置。囚われたパテマが足かせを付けられた故に、エイジを抱えても落ちてしまった故にたどり着けた世界です。

これだけでも驚きなのですが、これだけではまだどういったものなのかはっきりとわからず疑問を抱く事しか出来ません。それを解き明かすのが、物語の終盤にあります。

物語終盤、二人の前に姿を現した世界は、『本当の地上』。パテマ達の世界の『天井』にあたる部分が崩壊し、エイジの足下に広がっていたのは『空』。そう、実はアイガの人々こそがサカサマであり、アイガが『サカサマ人』と呼んでいた人達はそんなアイガの人々を見守る『監視者』だったのです。

ラストでようやくエイジ達や視聴者に真実が明かされた時のカタルシスは筆舌しがたいです。ラストの数分であらゆるシーンに納得がいき、全てのピースが埋まっていく素晴らしさ。映画を見た人だけが味わえるものだと思っています。何故これを映画館で見なかったんだ!

また、最後まで見て初めてソフトのジャケットの『方向』に理解が出来ます。空へと落ちそうになるパテマが下側に来るジャケットなのですが、この事を指していたと考えると納得がいきます。

色んな意味で逆転する感覚、その言葉に尽きる名作でした。