星と猫の数学

私を退屈から救いに来た、夢のヒーロー

【漫画ピックアップ】LIAR GAME

あらすじ

『神崎直』は「馬鹿正直」と称されるほど人を疑わずに信じてしまうお人好しな性格をしていた。

そんなある日、彼女の元に『現金1億円の入った箱』と『ライアーゲームへの招待状』が送られてくる。そこには「ライアーゲームに参加される場合のみ、この箱をお開けください」と書かれていた。しかし直はそんな事もしっかりと読まずに箱を開けてしまい、半ば強制的にライアーゲームの1回戦『1億円争奪ゲーム』に参加する事になる。

困り果てた彼女はかつての恩師に相談したところ、「その現金1億円を自分に預ければ安心だ」と言われ、疑いもせずに恩師に現金を渡してしまう。しかし実は恩師がライアーゲームの対戦相手であり、まんまと引っ掛かって現金全てを奪われた形になってしまった。

1億円を取り戻すために彼女は弁護士に相談し、そこで巨大マルチを詐欺にかけて潰した経歴を持つ天才詐欺師『秋山深一』に助けを求める。

紹介

2007年にドラマ化もされた漫画作品を一気読みしました。途中までは読んでいたのですが、最近になって完結した事を知って読みたくなったので借りて読了。

カイジ嘘喰い等のいわゆるギャンブル漫画に値する作品ですが、特徴としては『多数のゲームがチーム戦である事』『多数のゲームで現金を使った駆け引きがある事』が挙げられます。特に前者はこの作品のテーマ『信頼』に直接結びつくものであり、主人公の直が早期に抱いた信念を貫き通すための試練でもあり力でもあったと思っています。

横谷を始めとした対戦相手達はそれを叩きつぶすかのように自分の利益のみを追求して戦うも、知恵の点において不利な直を秋山が補う形で『勝ち』進んでいく*1というのが主な構図です。直がゲームを行っていくうちに成長していっているのも見所。

(以下、原作の結末についてネタバレがあります。なるべくこの結末を見ずに原作を読む事をオススメします)

ずっと気になっていた結末ですが、まず決勝戦が面白い決着の付け方になっていました。

決勝戦は因縁のあった秋山と横谷の対決があったのですが、まず横谷は決勝戦のチームわけである予備ゲームで直を引きずり込み、更に秋山のチームと自分のチームを負けさせて二人もろとも潰すという算段を立てていました。しかし秋山は直の信念でもある「全員を救う終わらせ方」を虎視眈々と狙い、実行しました。

それは『決勝戦のゲームの欠陥を突き、千日手(ゲームが膠着していつまでも勝敗が決まらない状態)にする』という事。しかし事務局側も決着が付くまでは決して折れず、何日経とうと続行させようとする。それを文字通り打破したのが『事務局の人間を抱き込み、制御室に入り込んでデータの入った機械を破壊する』という手段でした。こうする事でゲーム続行を不可能にし、勝者も敗者もない『ノーゲーム』とするのが秋山の一手でした。これによりこれまでの敗者の負債も帳消しになり、全員を救う事が出来たという事です。実に見事。

そして明かされるライアーゲームの真実、それは『ライアーゲーム』がとある国で書かれた未完(厳密には最終巻が検閲により発売されなかった)の小説であり、それをなぞるように実際に行う事で結末を見たかった事、そしてそれを映像化する事でとある国の人々への活力となると信じている事でした。直の信念が正しかった事が証明された瞬間であり、良い結末を迎えた……と思いました。

しかしそれを覆すかのように公開された映像が削除され、そこで漫画は幕引きとなりました。あまりにも後味の悪い引き方に納得がいきませんが、作者はひとまず続編が作れるなら作るという意志を持っているようなので、続編を待つしかありませんね。もし続くとなるとこれまでより遥かに巨大で力もある相手になりますし、『ゲーム』として成立しない戦いを強いられるのではないかとも思われます。

とはいえ結末を除けば巧みな心理戦がハラハラしつつも楽しい作品です。人を信じる直が周りを変えていき、救っていくその様はヒーロー的でもあります。

*1:ゲームとしては負けても利益を得て終わらせる形になったパターンが幾つもあるので、途中で何度も敗者復活戦を行っている。