星と猫の数学

私を退屈から救いに来た、夢のヒーロー

十行小説

十行小説「賽の河原」

「賽の河原ってあるよな」 「唐突に何を言い出すんだお前は」 「河原で石を積んで塔を作って、積み終える前に鬼が来て壊していく。親より先に死んだ子供がやって、それが出来ると親への供養になるとかなんとか」 「それで、何が言いたい?」 「何か似てるよ…

十行小説「パンツ見せて」

「別に良いけど?」 「違っがーーーーーう!! そうじゃない! 「パンツ見せて」と言われたら、取るべき行動は二つ! 汚物を見るような眼でこちらを見て思いきり罵倒するか、恥じらって戸惑いつつおずおずと本当にパンツを見せるか、そのどちらかだ!」 「ど…

十行小説 「Don't」

「……何をしているんだ、我が妹よ」 「えっと……おはようのキッス」 「欧米か!」 もう何年も前にテレビでよく耳にしていたツッコミを、まさか自分が言う事になるとは思いたくなかった。 そもそも欧米にしたってするとしても頬ぐらいなものだろうに、何故口と…

十行小説 「幸運」

メールが届いた。私はそれに驚き困惑し、確認した後に再度テレビを見て恐怖した。 私は携帯電話を二つ所持している。一つは連絡や交友用の携帯電話で、もう一つは『とある噂』の検証のためについ先日新しく契約したものだ。 『とある噂』とは口コミのみで静…

十行小説 「愛よ届け」

私は恋をしている。それも普通の恋ではない。これが成立すれば史上類を見ないカップルが誕生する。 この恋を成就させるため、私はハウトゥー本を必死に熟読し、彼女に対して様々なアプローチを行った。結果としては失敗した事も少なくなかったが、彼女の好感…

十行小説 「晴天の魔法少女」

雨が降っていた。現在形ではない、過去形だ。さっきまで夏の豪雨があり、あと数時間はこのまま降り続けるだろうと思っていた。それなのに今は雨が降った事さえ夢か幻だったのではないかと思うほどに、混じりけのない青が空一面を覆っている。 だが雨が降って…

十行小説 「賢者モード」

「ふう……」 目の前の惨状を見て俺は思わず溜息を漏らした。またやってしまった。今日はこれで三度目だ。 視界に入っているのは、キーボードに飛散した白濁の液体となだらかな曲線で形作られた裸体の女性が映っているディスプレイ。ディスプレイにも液体がか…

十行小説 「そうじゃない」

「あれ、姉さん?」 「え、お姉さん!? あんた達姉弟だったの!?」 確かに私は「私と合いそうな男の知り合いがいたら紹介してね」と言ったけど、それで紹介された相手が弟じゃ意味がない。私は結婚相手が欲しくてそう言ったんだから。 確かに私達姉弟は、…